2007年10月15日月曜日

秋の歌に寄せて

 去る九月二十六日の那須塩原、大黒屋さまのコンサートでは
秋にふさわしい和歌をセレクトし、各首のイメージを倍加させると思われるピアノ曲を
演奏しました。
大黒屋さまの完璧なホスピタリティに支えられて、ほんとうにこちらも心やすらぐ、
自然と一体となれたようなひと時でした。
ピアノは演奏すれば音が響きますが、実は演奏者はその音だけを聴いているのではなくて
感覚が異常に研ぎ澄まされてくるのです。(場合によっては遠くの話の内容すべてを聞き取れます)
今回は会場外の那珂川のせせらぎ、虫の声、風の音、が聞こえてくるままの十六夜が待たれる夕暮れどき。私にとって最高のシチュエーションでありました。
当然、音楽の内容にも影響を与え、こんな月の光を弾いているとは・・と自分でも驚いたくらい
いつもとは違う月の光。月光。水の戯れでした。
そして、最後のショパンの舟歌では、その曲をはじめてさらいだしたときのことが逐一思い出され
胸がいっぱいになって、そしてそのときもウェルテルとロッテが船に乗っている場面を思い浮かべたことなど、ショパンにとってはどんな舟歌だったのだろうと想像しながら・・

今回の和歌のセレクション、そして鑑賞、解説は箭内順一氏。曲目解説を上げてくださいましたので
詳しくはこちら
http://junitchy.exblog.jp/

弾いた曲順は
1、夕づく日・・ラヴェルの眠りの森の美女のパヴァーヌ  ラヴェル
2、まだ暮れぬ・・月の光  ドビュッシー
3、月見れば・・前奏曲 作品11-12 スクリャービン
4、嘆けとて・・月光 第一楽章  ベートーヴェン
5、竜田川・・水の戯れ  ラヴェル
6、眺むれば・・舟歌 ショパン 
7、行方なき・・コンソレーション リスト

一首ごとに曲を弾きたかったのですが、どうしてもつけられない歌がありました。
歌として完璧だと入り込む余地がありません。内容、それから音としてもう完成されていると。

だからといって歌詞になっている詩は完璧でないというわけではなく
想像をかきたてるものがある、なにかこちらも呼応せざるを得ないような・・
リートの詩もそうですね。

2 件のコメント:

Unknown さんのコメント...

最高のシチュエーションでの演奏と和歌の朗読、ホントに私も聴いてみたかったです。当日の観客の皆さんに深い感銘を与えたというのもうなずけますね。

葵耀古 さんのコメント...

ありがとうございます。お客様や大黒屋さま、箭内さんに支えられました。音楽は自分ひとりでしているのではないのだ、と思った瞬間でした。